中國の科學者は月探査機「嫦娥5號」が持ち帰った月の土壌の研究に基づき、新たな月熱変化モデルを打ち出した。現在から20億年前にも月の火山活動が続いたのはなぜかという、學術界の大きな謎を解明した。
中國科學院地質?地球物理研究所の陳意研究員は、「月は約45億年前に形成され、その質量は地球の約1%に過ぎなかった。これほど小さな天體は理論上、急速に冷卻され、すぐに火山活動が停止し、『死の星』になるはずだ。ところが昨年10月、中國の科學者は、嫦娥5號の玄武巖の研究により、月の火山活動が20億年前まで続いていたことを発見した」と説明した。
月の玄武巖は、月のマントルの溶融によって形成されたマグマが、火山噴火により月面に出て冷卻により結晶化された巖石だ。世界の學者は冷卻を続けるマントルの一部の溶融に対して2つの仮説を打ち出した。一つは、放射性元素の発熱により月のマントルの溫度が上昇したという仮説で、もう一つは水の含有量が多ければ月のマントルの融點が下がるという仮説だ。
だが中國の科學者は嫦娥5號の玄武巖の研究により、月のマントル領域に放射性発熱元素が豊富に含まれず、しかも非常に「乾燥している」ことが明らかになり、上述した2つの仮説を否定した。そのため月の火山活動がなぜこれほど長く続いたかは、月の研究における新たな謎になった。
この問題について、陳氏は科學研究チームを率い27點の代表的な嫦娥5號玄武巖片を選び、新たに研究開発された走査型電子顕微鏡スペクトル定量化スキャン技術により巖片のすべての主要成分を分析した上、一連の巖石學及び熱力學シミュレーション計算と結びつけ、嫦娥5號玄武巖の原始マグマ成分の復元に成功するとともに、アポロのサンプルの原始マグマと比較することで、その起源の深度と溫度を推定した。
同研究によると、若い嫦娥5號玄武巖の原始マグマには、アポロのサンプルよりも多くのカルシウムとチタンが含まれていることが分かった。こうした物質は溶融しやすい特徴があり、これが加わることで月のマントルの融點が大幅に下がり、マントルの一部の溶融による若い月の玄武巖の形成を誘発した。さらなるシミュレーション計算結果によると、月の內部は十數億年の持続的な冷卻を経たが、溫度は約80度しか下がらなかった。
陳氏は、「同研究は、月の內部に持続的かつ緩慢な冷卻があり、月のマグマ大洋後期結晶の溶融しやすい成分がマントルの深部に持続的に加わり、マントルのチタンとカルシウムを補っただけでなく、融點も下げたことで、緩慢に冷卻する月の內部環境を克服し、長期的かつ持続的な月の火山作用を引き起こしたことを示した」と述べた。(編集YF)
「人民網日本語版」2022年10月24日