今年から、ヒューゴー賞の受賞作家である劉慈欣の小説十數作品を原作とした「劉慈欣SF漫畫」シリーズ作品のフランス語版がフランスで次々と出版される予定となっており、多くのフランス人SFファンの期待を集めている。近年、シリーズ小説「三體」をはじめとする一連の中國SF文學作品が、その獨特な中國式「ハードSF」の魅力と、溫もりにあふれた人間的?文化的な雰囲気、そして鮮明な中國的要素によって、フランスだけでなく歐州全體の文學市場で無數のファンを獲得し、共感を呼んでいる。人民日報が伝えた。
「三體」を例にとると、2016年にフランスのActes Sud社がフランス語版で第一部を出版して以來、この小説はフランスの読者と文學評論家から広く好評を博した。フランスの新聞「ヴァン?ミヌート(20minutes)」は記事で読者に同作品を推薦し、「歴史學や物理學、哲學的思考を一體化した優れたSF小説」であり、SFと文學の美を兼ね備えており、一読の価値があると紹介した。またフランスのある雑誌は、同小説は西洋のSF文學とはストーリーや視點を異にしており、耳目を一新するものだと評した。Actes Sud社はその後2年間で、「三體Ⅱ?黒暗森林」と「三體Ⅲ?死神永生」のフランス語版も出版し、やはり文學市場で一際目を引く作品となった。
これら一連の中國SF文學作品がフランス人読者に好まれた重要な理由は、「新しさ」にある。筆者の自宅近くの書店では、昨年9月にActes Sud社が出版したフランス語版の劉慈欣作品「球狀閃電(GLOBE LIGHTNING)」がSF小説コーナーの目立つ位置に置かれていた。フランスの読者にとって、シリーズ小説「三體」は従來のSFストーリーを全く新しく大膽な視點で語っており、中國のSF文學と西洋のSF文學との違いを示した。中國のSF文學は、生命を見つめ、理解するための新たな方法を提供し、人類の価値と意義をより深く考えさせている。
フランス以外でも、中國SF文學作品はドイツや英國、スペインなど歐州諸國で読者から人気を博し、売り上げ、評判ともに素晴らしい成果を上げている。なかでも、ドイツ語版「三體Ⅰ」は、ドイツの重要なSF文學賞であるクルト?ラスビィッツ賞の最優秀外國小説賞を受賞した。
中國のSF文學作品が歐州でますます注目されている大きな理由は、歐州の読者の現代中國に対する興味が高まっていることにあると言える。このほか、中國のSFストーリーに反映されている中國式の哲學思想と蕓術的美意識も作品に文化的な深みと精神的な厚みを與え、ますます多くの歐州の読者に東洋の獨特な魅力を感じさせている。
フランス誌「Le Nouveau Magazine Littéraire」のコラムニストで文蕓評論家のアレクシス?ブローカ氏はその評論で、中國のSF作品に反映されている中國人の未來の科學技術に対する態度や、科學技術と人類の関係をどう処理しているのか、人と宇宙文明との関係をどう見ているのかといった點には、中國式の道徳や価値體系が映し出されており、読者が現代中國と中國人をさらに深く理解する一助になっている。この角度から言うと、SF小説は中國社會の変化を映す鏡のようなものであり、今後宇宙の秩序において中國が果たす役割に世界が期待していることを物語っているともいえよう。
SF小説は歐州文學において常に非常に重要な地位にあり、「SF小説の父」と稱えられるフランス人作家のジュール?ヴェルヌや、英國人作家のハーバート?ジョージ?ウェルズなど、お馴染みのSF作家を輩出してきた。1900年、ヴェルヌのSF小説「八十日間世界一周」が中國語に訳された初のSF小説として出版されると、その後多くの小説が続々と中國に紹介された。1世紀あまりを経て、これらのSF作品は無數の中國人読者に宇宙に関する啓蒙を與え、そうした読者の中には劉慈欣もいた。そして今、「劉慈欣SF漫畫」シリーズ作品が歐州の出版市場に進出していくにつれて、より多くの優れた中國のオリジナル漫畫コンテンツが世界の主流出版市場へと大規模に進出し、中國とフランス、そして中國と歐州との民間文化交流を促進するうえでプラスの作用を果たしていくだろう。
「劉慈欣SF漫畫」シリーズ作品は紙版が発売されるほか、デジタル版も同時出版される予定で、より活き活きとした出版形式で、原作小説より分かりやすく、文化に馴染みがないために感じる読みにくさを減らし、中國のSF小説がより多くの一般読者に受け入れられ、好まれやすいようにしている。漫畫シリーズのフランスでの出版元で、大型漫畫出版グループであるデルクール社のデルクール編集長は、「優れたストーリーと専門的な審美眼によって、このシリーズ作品は高い市場価値を備えている」と作品に対する自信を口にした。
先ごろ発表された「2019年度中國SF産業報告」によると、中國のSF市場の2018年生産額は17億8千萬元(1元は約15.73円)で、2017年比で83.5%成長した。2019年のSF市場生産額は引き続き成長しており、上半期だけですでに13億8千萬元に迫り、2018年の通年の77%に達している。勢いよく発展するSF環境はSF文學の創作に肥沃な土壌を提供し、中國SF文學作品の海外展開にとってもより多くの機會を提供している。科學的思考と中國の文化価値に基づいた優れた作品が海外の出版社によってますます紹介され、より豊富で多元的な宇宙観と、より輝かしく多彩な文化の情景を世界の読者に屆けることだろう。(編集AK)
「人民網日本語版」2020年2月19日