「名作+弾幕」。この二つの要素がミックスされたことで、この夏休みシーズン、中國の「四大名著」はその文化への扉を大勢の若者に向かって再び開くことになった。
6月12日、中國の動畫共有サイト、ビリビリ(bilibili)に中國中央テレビが制作した「四大名著」(「水滸伝」、「三國志演義」、「西遊記」、「紅樓夢」)のドラマがアップされ、広く注目を集めた。評価ポイント、再生回數(shù)、弾幕(コメント)の量ともに飛びぬけており、瞬く間にビリビリの各種ランキングを獨占し、関連の話題や討論のアクセス數(shù)もうなぎ登りとなった。1ヶ月以上経った7月27日になっても熱は冷めず、「四大名著」のドラマはテレビドラマランキングの上位にどっしりと座っている。
この弾幕文化はどのように形成されたのか。そして若者はなぜドラマを見るときに弾幕を書き込むのか。
弾幕:オタクの文化から「センター」を占める存在へ
「外來の文化」である弾幕は日本に起源があり、日本のニコニコ動畫が真っ先に打ち出したものだ。サイトのメインユーザーはいわゆる「オタク」で、畫面上にぎっしりと表示される文字はオタクコミュニティの中で存在感を示す方法だった。どこかにこもって、パソコンの畫面にだけ向き合う彼らだが、畫面上にアップされた文字を通じて意気投合し、結(jié)びつくことができた。
弾幕は通常は畫面の中で繰り広げられるシーンに対するリアルタイムのコメントであり、表現(xiàn)スタイルは短く簡潔で、一言か二言のコメントが多く、1語だけのものもある。弾幕は新しい流れの相互連動スタイルで、動畫視聴者を「傍観者」から「參加者」に変え、さらには動畫作品の重要な構(gòu)成要素にさえなった。
目下の弾幕の相互連動モデルはアニメ、バラエティ、ドラマ?映畫などの動畫サイトに多く集中しているだけでなく、各種の動畫配信プラットフォームもこのモデルを利用してネットユーザーと配信パーソナリティーとの間のコミュニケーションを?qū)g現(xiàn)している。ネットユーザーが自分で動畫を作成する割合が高くなるにつれて、「弾幕の大軍」が徐々にユーザーが自発的に制作する「Vlog」(ビデオブログ)や音MADなどに流れていった。弾幕の登場で、受け手の伝統(tǒng)的な意味での動畫やライブ配信の視聴行為がより豊富になったといえる。
弾幕の特徴:斷片化する理解、リアルタイムでフィードバック
「弾幕」という言葉からは、斷片化した狀態(tài)がイメージされる。電光石火、片言隻句、率直、ウィット、風(fēng)刺など、ほんの一言二言で奇抜な発想を表現(xiàn)するものもたまにはあるが、そのシーンに対する態(tài)度を表明するようなものがほとんどだ。
弾幕は「コメント」の範疇に入れられてはいるが、弾幕文化と伝統(tǒng)的な文蕓評論との間には非常に大きな開きがある。相対的に言って、弾幕の一番目の特徴は「リアルタイム」だ。弾幕の評論の対象は作品の中のごく短い斷片であることが多く、たとえばあるキャラクターの外見、登場した時の歩き方、服裝、表情、話し方、一言の臺詞、1つのシーン、小道具が本物らしいか、などだ。弾幕のコメントには當意即妙さが目立ち、注目されているのはその場、その時に視聴者どうしが相互に連動する中でお祭りムードが盛り上がることであり、真剣な思考や真の知識や鋭い見解を示すというものではない。弾幕はネット時代の産物だ。「深さ」が「速度」に置き換わると同時に、個性化、斷片化、平面化、コメディ精神と、風(fēng)刺、アンチエリートの傾向などはいずれも「ポストモダン」時代を別の側(cè)面から體現(xiàn)しているといえる。
リアルタイム性、相互連動性、視覚的経験が弾幕文化の巨大な魅力を形作る。多くの人が、伝統(tǒng)的な文蕓評論はこうした魅力をもつことができないと感じ、ひいては「深さ」はあっても活気あふれる賑やかさの中で生まれる魅力にはかなわないとさえ感じている。
多くのユーザーは黙って動畫を楽しむだけではなく、心の內(nèi)に自分を表現(xiàn)したいという強い欲望をもっている。大衆(zhòng)には自分の考えを表現(xiàn)する権利があり、自分が楽しいと思うこと、いやだと思うことを率直に述べる権利がある。それが本當のことでありさえすればよい。
若者はなぜ弾幕の熱狂を楽しむのか?
弾幕を通じて、受け手はオリジナル動畫コンテンツを「二次加工」できるようになる。弾幕で相互に連動することで、動畫制作者と受け手の間の境界が曖昧になる。人々はもはや受動的に「流されてくるコンテンツを見るだけ」という従來のモデルを受け入れるだけではなくなり、動畫コンテンツをリアルタイムで分析?批判し、さらにはパロディまで作り出す。
弾幕は知らない人同士のバーチャルな相互連動を促進する。これまでのように動畫の下のほうにあるコメント欄に書き込むのでは時間のずれが生じたが、弾幕はユーザー達に「世界のあちらとこちらで同じ時を共有する」相互連動のシーンを提供し、お互いに知らないユーザー同士が動畫のプログレスバーを見て、同じタイミングで自分たちのリアルタイムの感想や気持ちを表出できるようになった。
また、弾幕を通じてバーチャルな観客になることもできる。湖南衛(wèi)視の今年の春節(jié)(舊正月、今年は1月25日)特別番組の中で、安全な収録を行うため、會場に初めて「弾幕式観客席」を設(shè)置した。當日夜、設(shè)置されたスクリーンを通じて、全國の億単位の視聴者が「リアルタイム弾幕」の雙方向方式で參加し、新型コロナウイルス感染癥の中で溫もりと力を?qū)盲堡俊?/p>
弾幕という創(chuàng)造性に富んだ相互連動スタイルが、遠く離れた場所にいる人々をバーチャルネットワークの中に集結(jié)させた。このことは私たちにロシアの思想家ミハイル?バフチンの「カーニバル性をもった広場における生活」を連想させる。それは階層、富、職業(yè)、年齢、身分などの違いを打ち破り、誰もがその中で平等に交流し、対話し、遊ぶことのできる空間だ。
もちろん、こうした一時的なバーチャルのカーニバルが実體ある空間の日常生活に代わるわけではない。なぜならそこには現(xiàn)実の暮らしにおける重要な要素の「現(xiàn)場感覚」がないからだ。動畫サイトでオンライン初発信の映畫を見て弾幕を打ち込んで評論するより、映畫ファン達は一日も早く映畫館に行って映畫鑑賞の楽しみに浸りたいと考えている。クラウドで歌手のライブを見るより、音楽ファン達はライブ會場で自分たちのスターと一緒に歌いたいと願っている。だから私たちは、感染癥が完全に終息した後には、現(xiàn)場での體験がもたらす感動を再び味わいたいと願っているのだ。(人民網(wǎng)日本語版論説員)
「人民網(wǎng)日本語版」2020年7月31日